白昼夢

いつも眠いひとが色々いうブログ

アイドリッシュセブンの候補生のよくねむる彼を推す理由

アイドリッシュセブンというコンテンツの候補生という(不本意ですがほぼサブというかモブ)枠において、よく眠り遅刻を繰り返してしまう寝坊常習犯で、そのことを気にしている由良ねむるくんという男の子がいて、彼が大変かわいい、推せるという話を先日しました。 


今回は、「どうしてわたしが由良ねむるくんにこんなに惹かれるのか」という話をします。



わたしの話をします。

わたしは特発性過眠症です。


わたしが彼に出逢ったのは、それが原因で仕事をやめ、半年ほどごろごろとニートをしていたその真っ只中のときでした。


当時、「こんなに毎日死ぬほど眠くて毎日死ぬほど寝ている人間に出来る仕事などないのではないか、つーか毎日こんなに寝ていて何も成せていない時点で死んでいるのと大して変わらないのではないか、むしろ生きているだけで金を食い潰しているのだからヘタに死んでいるより明らかに害悪なのではないか、いっそ死にたい、いやでも死ぬのもそれはそれで金がかかるらしいしもう全部めんどくさいアホらしい」という、今思うと「いやお前それ半分鬱じゃね?」みたいな無限ループを繰り返しながら気がついたら寝ているという不毛な日々を送っており、元々好きで色々と遊んでいたアイドルゲームに一日の覚醒時間をほぼ当てるというニートの鏡かよみたいな時間の使い方をしていたのですが、そんな時、とりあえず育成していた候補生の中に偶然いたのが、由良ねむるくんでした。


救われてしまったんだよ。


二次元の、しかもわたしが偶然ズボッているアイドルというコンテンツジャンルに、彼のような子がいること。

アイドルという輝かしい世界観の中で、それでも「起きられないのはしんどい、それを責められるのはとてもつらい」と、他の人から見れば「そっか大変だね」で済む範囲で、それでも当人からしたら切実であろうマイナス面を、きちんと描いてくれたこと。

候補生というメタ的に見ると絶対にメインの彼らを越えることができない立場にいて、致命的な欠点を抱えてなお、落ち込んだり悩んだりしながら、それでも頑張ろうとしている彼の姿。

救われてしまったんだ。


彼のラビチャを初めて読んだとき、わたしはTwitterでひとりでキレまくっていました。

どうして、睡眠障害の、よりによって眠りすぎるような子を、よりによって候補生なんかにするんだと、一体どれだけこの子がつらいか考えたことがあるのかと、本気でキレ散らかしていました。

今でも考えると切ないです。

それでも、キレながらも、悲しくて切なくて苦しくて仕方がないながらも、わたしはそれらのすべてに、うっかり共感し、癒されて、救われてしまったのでした。

わかるからです。

眠りすぎてつらいことや、それを自分ではどうにもできないこと、自分ではどうにもできないことで他人から責められたり軽んじて見られたりすること、そのせいで歯痒くつらい思いをすること、どうにかしたくてもどうしようもなくて、どんどん自信がなくなって、どう振る舞っていいかわからなくなっていくことも。

全部つらい。わかるよ。

由良ねむるくんという17歳の男の子が、リアルタイムで感じているであろうつらさの一片が、わたしにはわかる。

わたしも当事者だからです。


しかも、由良ねむるくんはアイドルです。

ただのアイドルであったならまだよかった。

候補生です。メインにはなれません。

人の手でつくられたキャラクターであり、アイドリッシュセブンというコンテンツにサブキャラクターという立場として配置された時点で、もうそれは運命付けられています。

今後、公式がもしも候補生にスポットを当ててくれたとしても、メインよりも大きなトップアイドルになれることは恐らくないでしょう。

彼がいくら向こう側の次元で、作中の隅っこで理不尽な現実と闘って、どんなに足掻き抗い頑張ろうとしている、頑張っているとしても、「アイドリッシュセブン」というコンテンツにおいて、彼が主人公になることはできない。

彼はそれを知らない。

外側から見ているわたしたちだけが、彼が抗っている現実以上に理不尽な、その事実を知っています。

つらいね。

でもそれが現実なんだ。

そして、そういったメタ的なものも含めた、彼をとりまくそれらすべての理不尽に、そのしんどさに、どうしようもなく寄り添いたくなってしまったのです。誰がなんと言ったって構わないと思うほど。

もしも彼が候補生ではなくメインキャラクターであったなら、わたしはこんなに彼を贔屓していなかったかもしれません。

それだけ、「メインには叶わない候補生という立場」という事実とそのしんどさやつらさも含めて、その絶妙なリアルに、現実味のあるつらさに、「つらい」と歯噛みしながらも、地団駄を踏みながらも、それでも救われてしまったのです。

「ありがとう」と言わざるを得ない。


ねむるという「いやお前これこの子のことちゃんと人間扱いしてんのかよ特徴だけで人間になれると思ったら大間違いだぞ」みたいな彼の名前にも憤慨していたのですが、もしかしたら芸名かもしれないとか、そういう名前そのものにもとてもエモみを感じるようになってしまいました。

感化されています。承知の上です。


アイドリッシュセブンというコンテンツ自体はリリース当初からプレイしており、なんなら候補生オーディションガチャとかいう今思うとなんの前振りだったんだよ生かせよみたいな謎の事前登録イベントから遊んでいるのですが、本格的にガチハマりしたのは、由良ねむるくんに出逢ってからです。


よく眠るというキャラメイクは、怠惰さやマイペースさ、ミステリアスさ、天才肌等の象徴のように扱われます。

有名な例を上げればのび太くんだとかねてるくんだとかもその系譜だと思います。

そういった怠惰さやマイペースさ、天才肌系統でキャラメイクされた「よく眠る、寝坊をする」キャラは巷にも割といますが、「そのことで怒られてしまうことがつらい、頑張って起きたいのに起きられない」みたいなキャラメイクをされた子を、わたしは他に知りません。

いるなら是非紹介してください。速攻でその作品を見に行きます。


由良ねむるくんに、「よく寝るキャラ」にありがちな怠惰さはありません。

多少マイペースではあると思いますし(この性質でマイペースでなかったら鬱で死んでしまう)、天才肌的な設定ではあるようですが、それもそこまで顕著ではありません。

むしろ、頻繁に「ごめんなさい」を連発し、言葉尻を濁すような話し方をするチャットの文面から見ても、恐らく自信がない方なのだと思います。(土壇場では割としたたかな感じの発言はしていますが)

しかしどんなに自信がなくても、どんなに自分が悪いと思っていても、起きられなくて仕事をすっぽかしてしまう時点で、怒られてしまうだけでなく、もしかしたら周囲からはまるで自信があったり不遜なように思われてしまうのかもしれません。

そんな彼を、主人公でありマネージャーである紡ちゃんは、否定することなくまるまる受け入れ、受け止め、勇気づけてくれました。

「協力するからなんとかなる方法を一緒に探そう」「頑張りましょうね」と言ってくれました。

(一般的に見れば問題のある子を受け止めて勇気づけて奮起させてしまえるだけの彼女の漢気というか頼り甲斐というかマネージャー力にも感服しますが、それについてはまた別の機会に)

それだけで、否定されないというだけで、彼がどれだけほっとしたのか、考えるだけで胸が熱くなります。

「いいんだ」と、肯定されたような気がしたのです。

いいんだ。由良ねむるくんみたいな子がいたって、全然いいんだ。

寝過ぎるからなんだ。確かにそれで仕事をすっぽかしたり遅刻をしてしまうのは悪いことだけど、でも、それがつらくないということにはならない。

悩んでいることは間違いじゃないし、そのことで他人に迷惑をかけているからといって、むしろだからこそ、そのことも込みで、つらいと言ってはいけないことにはならない。

苦しいことは苦しいと言っていいし、それがどんなに他人に迷惑をかけている事象であったとしても、だからこそ、本人がつらいならば、つらいという感情そのものは、否定されることがあってはならないとわたしは思う。


眠りすぎるという性質込みでの彼の存在を、否定していい人間なんて、誰もいません。

メインキャラクターの彼らと彼らがそれぞれ持つ性質を、否定していい人間なんて誰もいないのと、同じように。


よく眠るキャラメイクをされたキャラクターが巷にそこそこ溢れるなかで、きちんと「そうであることのつらさ」を描き、キャラクターに「つらい」と言わせてくれた、「お医者さんに行ってもダメだった」とまで言わせてくれたその誠実さと、その上で、ヒロインがそれを否定せずに「一緒に頑張ろうね」と寄り添う意思を示してくれたことは、娯楽コンテンツでのキャラクターへの向き合い方としては、非常に稀有なものなのではないかと思います。

ありがたいことです。

しかも、何度も言うようですが、彼はサブキャラクターです。

サブキャラクターにそれだけの現実味と誠実さを盛り込み、(それがキャラクターとしての役目とはいえ)ヒロインにきちんとそれを肯定させてくれたことや、サブキャラクターに彼のようなキャラクターを置くことにどういう意図があるのかは定かではありませんが、そこに意味があるのだと、公式もなにか思うところがあるのだと思いたい。

(それはそれとして「メインになれないキャラにも色々いて色々あるんだという比喩か?リアリティか!?」と勝手に考察してエモいエモいと喚いてはいます)


普通の人が彼を見て、彼のラビチャを読んでどう思うのかはわかりません。

かわいいと思ってくださる方もいるでしょうし、エロティシズムに結びつける方もいるかもしれません。可哀想だと思う方もいるかもしれません。「そんなに寝られるの?」と不思議がる人もいるかもしれません(実際問題寝られる人間はいくらでも寝られるし起きられない人間はなにやったって起きない)。そもそも候補生にスポットが当たっていないので、彼のラビチャを読んでいる方の方が少ないかもしれません。

それでも、わたしには彼は特別です。

例え彼のことを誰がどんなにモブだのエサだの呼ぼうと、どんなに知られていなかろうと、どんなに彼自身がアイドリッシュセブンというコンテンツの中で報われなかろうと、どんなに公式が候補生を振り返ってくれなかろうと、他ならぬそんな彼の存在に救われてしまったひとりの人間がいるという事実は、変えることはできません。


由良ねむるくんは誰の代わりにもなれない。


彼はサブで、名前があるのにモブ呼ばわりされたりもするうちのひとりだけど、それでも、わたしには彼は特別な存在だし、わたしの人生には彼が必要だった。

彼がいてくれたから、わたしはしんどかったあの時に、「だからなんなんだよ!」と開き直ることができた。


彼を思うだけで、彼が向こう側のもうひとつの次元でわたしとよく似たしんどさを抱えながらも頑張っていると思うだけで、わたしも頑張ろうと思えるのです。


「アイドル」というものの定義が、その存在によって、輝きによって、誰かを幸福にしたり元気にしたり勇気づけたりすることならば、わたしにとって彼は間違いなく、誰にも及ぶことのできない、オンリーワンのトップアイドルです。


そして、誰に蔑ろにされようと、どんなにコンテンツの主役になれなかろうと、彼の人生の主役は、主人公は、彼なんだ。


自覚しているかはわからないけど、それを必死に体現しようと、きちんと自分の時間の主人公であろうと抗おうとしている、誠実な君の姿を、本当に少しだけれど知っています。

起きられなくてもいいよ。目覚まし時計何個使ったっていいよ。誰に責められたって、たとえ誰も君のことを見ていなくたって、わたしは君の味方です。

生きていてくれてありがとう。この世に生まれてきてくれてありがとう。アイドル候補生でいてくれてありがとう。わたしは君の誕生日も知らないけど、それでも、君を生み出してくれた、君に関わるすべての人に、本気で感謝しているんだ。


彼に出逢っていなければ恐らく今のわたしはいません。

けれど幸福なことに、わたしは彼に出逢うことができた。

公式がスポットを当ててくれない、モブ同然の扱いをされているサブキャラクターが、それでも現実の人間の時間を動かしたこと、これはものすごいことではないでしょうか。

フィクションやキャラクターは人間を(主に精神的に)殺しもするけれど、救いもする。

それを、改めて体感させてくれた由良ねむるくん及びアイドリッシュセブンというコンテンツには、本当に感謝してもしきれないと思っています。

そして、人間を殺しもすれば救いもする、それらのフィクションやキャラクターに、メインだのモブだのの貴賤はありません。


思うところがありすぎて文章がぐちゃぐちゃですし、キャラ解釈を盛りすぎているところがあるかもしれませんが、それだけサブキャラクターに思い入れを抱く人間がいるということ、 誰かが目にも止めない、もしくは誰かがモブと呼ぶキャラクターが誰かを救うこともあるのだということを、ほんの少しでも頭の隅に置いていただけたなら幸いです。


そしてあわよくば、アイドリッシュセブンの候補生の魅力に気づいてくれる方が、ひとりでも増えたならば、こんなに嬉しいことはありません。


いつか、候補生である彼らが、「アイドリッシュセブン」というユニットと同じくらい、キラキラしたステージに立てることを、そんな未来が来ることを、微かな希望を糧に、切に願っています。


わたしを救ってくれたアイドルが、アイドルであり続けるために、わたしに出来ることは少ないけど、だからこそ、ちゃんと君を推したいんだ。